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柊研究所の備忘録

アート×ものづくり×教育を考える研究者です。

ブドウのないブドウ畑

第4回は、「一人旅」についてです。

一人旅に行くとき、誰も行かないような閑散としたところに行くことが好きです。そのきっかけとなった旅の話。

 

10年ほど前に山梨にあるブドウ畑に行きました。そこは、勝沼ぶどう郷駅というところで、山々にブドウ畑が一面に広がるところです。

 

その当時、一人旅に行きたい欲求はあれど、見知らぬ土地は不安も大きく、とりあえず観光雑誌をみて次に行く土地を探していました。表紙を飾る視界いっぱいに広がるブドウ畑を想像しながら、駅に着くと、そこには、ハゲた茶色の山々が広がっていました

 

季節は3月、ブドウ畑の旬は夏なのでそれも当然なのですが、当時の僕は相当なショックを受けました。アホでした。

 

一番の売りであるブドウのないこの季節、お土産やさんや観光スポットはこぞって臨時休業、バスの本数も少なく人もいない。途方に暮れ始めていました。

 

トボトボと坂道を下って行くと、大きなお土産やさんとレストランがセットになったようなところに出ました。ランチは1000円、他にお客さんがいないこの季節、従業員総出でお出迎え椅子を引いてくれる、コートを預かってくれる、スパークリングワインをつけてくれる、至れり尽くせりのおもてなしでした。

 

オルゴール館では、魅力的な楽器が奏でるオーケストラを独り占め、宿泊施設では、自分の好みに合わせた時間に温泉への送迎、と今まで経験したことないようなVIP待遇を受けました。

 

ぼーっとすることが好きな僕にとってこの旅は特別なものになりました。旅に求める非日常的な経験は、美しい景色や美味しいものから外れたところにも存在します。

 

歳をとってくると、ついつい約束された感動を求めてしまいます。そんなときにふと思い出す少し奇妙な旅の話でした。